Photoshopで金属を精細に表現する「ヘアライン加工」のテクニック
レイヤースタイルで簡単に作れたら便利なんですが、チープな出来栄えでは満足できない…。そんなあなたにぴったりな「ヘアライン加工」の精細な再現方法をご紹介したいと思います。
1.特有の光沢感は「ヘアライン加工」
高価なステレオなどで見ることができるツヤ消しの光沢感は「ヘアライン加工」と呼ばれる金属の表面加工で作られています。
旋盤を使って髪の毛ほどの細い傷をつけることで、テカリが抑えられたマットな輝きが演出されます。
今回は「線形」と「円形」2種類のヘアライン加工を、Photoshopで精細に表現する手順をご紹介したいと思います。
2.線形で作る「アルミ削り出しの文字」
まずは線形のヘアライン加工が映える「文字をアルミで削り出したパターン」を作りましょう。もし、Photoshopのレイアウトが私と異なっている場合はPhotoshopの作業環境をリセットする方法をご覧下さい。
2-1.文字を配置する
まず、画面左の[ツールバー]から[横書き文字ツール(T)]を選択してテキストを入力します。
今回は「DESIGN」というテキストを、フォント[Futura Bold]で入力しています。
2-2.グラデーションで光沢を出す
綺麗に作るポイント
グラデーションを上手に掛けることが「金属の表現」を演出する上で一番のポイントです。ヘアライン加工を行った金属特有の光沢感は「うっすらとしたグラデーション」でリアリティが増します。
画面右の[レイヤーパネル]で加工するテキストを右クリックして、[パネルメニュー]から[レイヤー効果]をクリックします。
[レイヤースタイル]ダイアログが表示されるので、[グラデーションオーバーレイ]をクリックします。
[グラデーションオーバーレイ]の項目が表示されるので、各項目に以下の数値を設定します。
①[描画モード:通常]②[不透明度:100%]③[スタイル:線形(シェイプ内で作成にチェックする)]④[角度:90°]⑤[比率:100%]
次に、[レイヤースタイル]ダイアログ内にある[グラデーション]の[クリックでグラデーションを編集]をクリックして、[グラデーションエディター]を開きます。
[グラデーションエディター]ダイアログ内にある、[プリセット:黒、白]を選択して、4つの[カラー分岐点]の左下のものをクリックします。
終了点の[カラー]をクリックして[カラーピッカー]ダイアログを開き、色を[#dddddd]へ変更して[OK]をクリックします。
これでうっすらとしたグラデーションが掛かりました。
2-3.ベベルとエンボスで立体感を出す
アルミ削り出しの厚みを表現するために、[ベベルとエンボス]を使って立体感を出します。厚みを薄く抑えることで、スタイリッシュなエンブレムの様な仕上がりになります。
先程と同様、画面右の[レイヤーパネル]で加工するテキストを右クリックして、[パネルメニュー]から[レイヤー効果]→[ベベルとエンボス]をクリックします。
[ベベルとエンボス]の項目が表示されるので、各項目に以下の数値を設定します。
【構造】①[スタイル:ベベル(外側)]②[テクニック:滑らかに]③[深さ:100%]④[方向:上へ]⑤[サイズ:1px]⑥[ソフト:1px]
【陰影】①[角度:45°]②[包括光源を使用:チェックする]③[高度:30°]④[ハイライトのモード:スクリーン(不透明度:50%)]⑤[シャドウのモード:乗算(不透明度:50%)]
これで厚みを薄く抑えた立体感が表現できました。
2-4.線形のヘアラインで加工する
最後に「線形のヘアライン加工」を行って仕上げます。 このフェーズで、一気に高級感のある金属を演出します。
画面左の[ツールバー]から[長方形ツール]を選択して、テキスト全体を覆うように長方形のシェイプを作ります。
次に、作成したシェイプを選択した状態で、画面右の[属性パネル]から[シェイプの塗りを設定]をクリックして、カラーピッカーから[ブラック]を選択します。
画面右の[レイヤーパネル]で加工するシェイプを右クリックして、パネルメニューから[スマートオブジェクトに変換]を選択します。
画面上部の[メニューバー]から[フィルター]→[ノイズ]→[ノイズを加える]を選択します。
[ノイズを加える]ダイアログが表示されるので、各項目に以下の数値を設定してOKをクリックします。
①[量:200%]②[分布方法:均等に分布]③[グレースケールノイズ(チェックする)]
長方形のシェイプにグレースケールのノイズが追加されました。
次に、画面上部の[メニューバー]から[フィルター]→[ぼかし]→[ぼかし(移動)]を選択します。
[ぼかし(移動)]ダイアログが表示されるので、各項目に以下の数値を設定してOKをクリックします。
①[角度:0°]②[距離:200pixel]
[ノイズ]と[ぼかし(移動)]の効果で、ランダムに刻まれたヘアラインが表現できました。
[レイヤーパネル]でシェイプを右クリックして、パネルメニューから[クリッピングマスクを作成]を選択します。
[レイヤーパネル]の[不透明度]を[20%]に変更します。
最後に、テキストにシェイプの内容を反映させる為に、[レイヤーパネル]でテキストを右クリックして、[レイヤー効果]を選択します。
[レイヤー効果]の[高度な合成]にある[クリップされたレイヤーをまとめて描画]のチェックを外して、[内部効果をまとめて描画]にチェックを入れて、OKをクリックします。
2-5.「アルミ削り出しの文字」の完成
これで「線形を使ったアルミ削り出しの文字」が完成しました。
今回は薄いプレートをイメージして作成しましたが、ベベルとエンボスで更に立体感を出したり、グラデーションをゴールド系に変更することで、様々なバリエーションを作る事も出来ます。
3.円形で作る「メタリックボタン」
次に、円形のヘアライン加工が際立つ「メタリックボタン」を作りましょう。高級なオーディオに付いてるボリュームをイメージしたデザインサンプルです。
3-1.円を描く
まず[楕円形ツール]を選択して、アートボードの中央に正円を配置します。
3-2.円に影を付ける
円に物理的な高さがあるような演出を行うために、[ドロップシャドウ]を使って影を付けます。
[レイヤーパネル]で加工するシェイプを右クリックして[レイヤーパネル]から[レイヤー効果]を開きます。
[レイヤースタイル]ダイアログが開くので[ドロップシャドウ]をクリックして、各項目を以下の数値に設定します。
構造:①[描画モード:通常(カラー#000000)]②[不透明度:50%]③[角度:45°(包括光源を使用にチェックする)]④[距離:40px]⑤[スプレッド:0%]⑥[サイズ:7px]
円の左下に影を付けることで、右上から光が当たる円柱を再現出来ました。
3-3.円を更に立体的にする
[ベベルとエンボス]を使って円自体に厚みを持たせ、立体感を出します。
[レイヤーパネル]で加工するシェイプを右クリックして[レイヤーパネル]から[レイヤー効果]を開いて、[ベベルとエンボス]を選択します。
[ベベルとエンボス]の項目が表示されるので、各項目に以下の数値を設定します。
【構造】①[スタイル:ベベル(外側)]②[テクニック:滑らかに]③[深さ:100%]④[方向:上へ]⑤[サイズ:3px]⑥[ソフト:3px]
【陰影】①[角度:45°]②[包括光源を使用:チェック]③[高度:30°]④[ハイライトのモード:スクリーン(不透明度:50%)]⑤[シャドウのモード:乗算(不透明度:50%)]
[ベベルとエンボス]の加工で、より立体感が増しました。
3-4.円にグラデーションを掛ける
光の当たり方を再現するために、グラデーションを掛けます。
[レイヤーパネル]で加工するシェイプを右クリックして[レイヤーパネル]から[レイヤー効果]を開いて、[グラデーションオーバーレイ]を選択します。
[グラデーションオーバーレイ]の項目が表示されるので、各項目に以下の数値を設定します。
①[描画モード:通常]②[不透明度:100%]③[スタイル:角度(シェイプ内で作成にチェック)]④[角度:30°]⑤[比率:100%]
次に[クリックでグラデーションを編集]をクリックして[グラデーションエディター]を開きます。
[グラデーションエディター]の[カラー分岐点]を追加して、各項目に以下の数値を設定します。
①[位置:0%][カラー:#cccccc]
②[位置:16%][カラー:#999999]
③[位置:33%][カラー:#ffffff]
④[位置:34%][カラー:#cccccc]
⑤[位置:50%][カラー:#999999]
⑥[位置:66%][カラー:#ffffff]
⑦[位置:67%][カラー:#cccccc]
⑧[位置:84%][カラー:#999999]
⑨[位置:99%][カラー:#ffffff]
⑩[位置:100%][カラー:#cccccc]
これで、3箇所に強いハイライトが入った円形のグラデーションが出来ました。
3-5.円形のヘアラインで加工する
続いて「円形のヘアライン加工」を行います。
画面左の[ツールバー]から[長方形ツール]を選択して、円のシェイプを覆うように長方形のシェイプを作ります。
次に、作成したシェイプを選択した状態で、画面右の[属性パネル]から[シェイプの塗りを設定]をクリックして、カラーピッカーから[ブラック]を選択します。
画面上部の[メニューバー]から[フィルター]→[ノイズ]→[ノイズを加える]を選択します。
[ノイズを加える]ダイアログが表示されるので、各項目に以下の数値を設定してOKをクリックします。
①[量:150%]②[分布方法:均等に分布]③[グレースケールノイズ(チェックする)]
長方形のシェイプにグレースケールのノイズが追加されました。
次に、画面上部の[メニューバー]から[フィルター]→[ぼかし]→[ぼかし(放射状)]を選択します。
[ぼかし(放射状)]ダイアログが表示されるので、各項目に以下の数値を設定してOKをクリックします。
①[量:80]②[方法:回転]③[画質:高い]
ノイズとぼかし(放射状)の効果で、ランダムに刻まれた円形のヘアラインが表現できました。
[レイヤーパネル]でシェイプを右クリックして、パネルメニューから[クリッピングマスクを作成]を選択します。
[レイヤーパネル]の[不透明度]を[15%]に変更します。
先ほどと同様にシェイプの内容を反映させる為に、[レイヤーパネル]で円形のシェイプを右クリックして、[レイヤー効果]を選択します。
[レイヤー効果]の[高度な合成]にある[クリップされたレイヤーをまとめて描画]のチェックを外して、[内部効果をまとめて描画]にチェックを入れて、OKをクリックします。
これで、シェイプにヘアライン加工が反映されました。
3-6.「メタリックボタン」の完成
最後に「VOLUME」とテキストを乗せればメタリックボタンの完成です。
今回はステレオのボリュームボタンをイメージして制作しましたが、円形のヘアライン加工が合う素材であればジッポライターや時計など、様々な金属製品の表現に応用できます。
4.まとめ
ヘアライン加工のまとめ
- グラデーションを上手に掛ける
- うっすらとしたグラデーションでリアリティが増す
- ノイズとぼかしでヘアラインは作れる
再現して作ることは出来ましたか?うまく作れなかった方は、実際に制作しながら解説する動画を撮影していますので、是非もう一度チャレンジしてみて下さい。